所有権移転登記手続等請求事件 

平成23年(受)第2196号 所有権移転登記手続等請求事件
平成26年2月27日 第一小法廷判決

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=83983&hanreiKbn=02

【判決要旨】
権利能力のない社団は,構成員全員に総有的に帰属する不動産について,
その所有権の登記名義人に対し,当該社団の代表者の個人名義に所有権
移転登記手続をすることを求める訴訟の原告適格を有する

【内容】
『原判決の主文中,持分移転登記手続を命ずる部分は,「上告人は,被
上告人代表者Aに対し,上記土地について,委任の終了を原因とする持
分移転登記手続をせよ。」というものである。』

のですが,
権利能力のない社団の構成員全員に総有的に帰属する不動産について

①当該社団の代表者が自己の個人名義に所有権移転登記手続をすること
を求める訴訟を提起すべきものであって,当該社団自身が代表者の個人
名義に所有権移転登記手続をすることを求める訴訟を提起することがで
きるか?

②当該社団の代表者である旨の肩書を付した代表者個人名義の登記をす
ることは許されないから,「被上告人代表者A名義に持分移転登記手
続をすることを命じた原審の判断は違法ではないか?

という争点の訴訟。

結論①できる
権利能力のない社団は,構成員全員に総有的に帰属する不動産について,
その所有権の登記名義人に対し,当該社団の代表者の個人名義に所有権
移転登記手続をすることを求める訴訟の原告適格を有する。

理由
(1) 特定の訴訟物について,誰が当事者として訴訟を追行し,また,誰
に対して本案判決をするのが紛争の解決のために必要で有意義であるか
という観点から決せられるべき事柄である。
 そして,実体的には権利能力のない社団の構成員全員に総有的に帰属
する不動産については,実質的には当該社団が有しているとみるのが事
の実態に即している。
 当該社団が当事者として当該不動産の登記に関する訴訟を追行し,本
案判決を受けることを認めるのが,簡明であり,かつ,関係者の意識に
も合致していると考えられる。

(2) 権利能力のない社団の構成員全員に総有的に帰属する不動産についは,
当該社団の代表者が自己の個人名義に所有権移転登記手続をするこを求め
る訴訟を提起することが認められている(最高裁昭和45年(オ)第232
同47年6月2日第二小法廷判決・民集26巻5号957頁参照)。
 このような訴訟が許容されるからといって,当該社団自身が原告となっ
て訴訟を追行することを認める実益がないとはいえない。

結論②違法でない
理由
 原判決の主文においては,「被上告人代表者A」への持分移転登記手
続が命じられているが,権利能力のない社団の代表者である旨の肩書を
付した代表者個人名義の登記をすることは許されないから(前掲最高裁
昭和47年6月2日第二小法廷判決参照),
 上記の主文は,Aの個人名義に持分移転登記手続をすることを命ずる
趣旨のものと解すべきであって,
 「被上告人代表者」という記載をもって原判決に違法があるというこ
とはできない。

権利能力なき社団の移転登記

判決全文
判決全文

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