遺産共有持分と他の共有持分との間の共有関係の解消のために裁判上採るべき手続は共有物分割訴訟

平成22(受)2355 共有物分割等請求事件
平成25年11月29日最高裁判所第二小法廷判決
http://r26.smp.ne.jp/u/No/277563/k2C-5HFKeqJ2_11732/131203041.html
土地相続人らが遺産共有状態の土地の共有物分割を求めた事案において、裁判所は、遺産共有持分を他の共有持分を有する者に取得させ、その者に遺産共有持分の価格を賠償させてその賠償金を遺産分割の対象とする価格賠償の方法による分割の判決をする場合には、その判決において、各遺産共有持分権者において遺産分割がされるまで保管すべき賠償金の範囲を定めた上で、遺産共有持分を取得する者に対し、各遺産共有持分権者にその保管すべき範囲に応じた額の賠償金を支払うことを命ずることができるものと解するのが相当であるなどとして、全面的価格賠償の方法を採用した原審を維持し、上告を一部棄却・一部却下する判決(29日)

裁判要旨
1 共有者が遺産共有持分と他の共有持分との間の共有関係の解消のために裁判上採るべき手続は共有物分割訴訟であり,その判決で遺産共有持分を有する者に分与された財産は遺産分割の対象となり,この財産の共有関係の解消は遺産分割による
2 遺産共有持分の価格を賠償させる方法による共有物分割の判決がされた場合には,賠償金の支払を受けた者は,これをその時点で確定的に取得するものではなく,遺産分割がされるまでの間これを保管する義務を負う
3 裁判所は,遺産共有持分の価格を賠償させる方法による共有物分割の判決をする場合には,同持分を有する各共有者において遺産分割がされるまで保管すべき賠償金の範囲を定め,持分取得者にその範囲に応じた賠償金の支払を命ずることができる

判決全文

共有物分割等請求

 遺産相続により相続人の共有となつた財産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家事審判法の定めるところに従い、家庭裁判所が審判によつてこれを定めるべきものであり、通常裁判所が判決手続で判定すべきものではないと解するのが相当である
(最判昭62.9.4)

 相続開始後遺産分割前に,共同相続人の1人から遺産を構成する特定不動産の共有持分権を譲り受けた者が,共有関係の解消のためにとるべき手続きは,遺産分割審判ではなく共有物分割訴訟である
(最判昭50.11.7)

 今般の最高裁判決は,ある不動産が物権共有でもあり遺産共有である場合の共有関係を解消する手続は,共有物分割なのか,遺産分割なのかについての判例です。

参考:姫野司法書士試験研究所
http://hiroyukihimeno.blog42.fc2.com/blog-entry-2512.html