生活困窮者の把握のための連携と生活保護の適切な運用を求める会長声明

http://www.shiho-shoshi.or.jp/association/info_disclosure/statement/statement_detail.php?article_id=54

平成24年02月29日

生活困窮者の把握のための連携と生活保護の適切な運用を求める会長声明

日本司法書士会連合会
会長 細 田 長 司

 平成24年2月20日頃、さいたま市北区在住の60代の夫婦と30代の子の家族3人が自宅賃貸マンションで餓死するという痛ましい事件が起こった。
 詳細については明らかでないが、この事件は、家族が何らかの理由で住民票をさいたま市に移していなかったため行政への相談ができず、また、行政からも発見されず、餓死してしまったということのようである。
 このマンションがある地域は、昔からの農家と工場、雑木林や畑が混在した地域であり、住民同士が顔の見える関係にはなかったことが容易に推測できる。

 そこで、このような餓死事件を二度と起こさないためにも、まず各自治体においては、平成22年10月1日付厚生労働省社会・援護局保護課長通知(社援保発1001第1号)にもあるとおり、要保護者把握のための関係部局・機関等との連絡・連携体制の強化を徹底するべきであり、上述したような特に地域のコミュニティが成立しにくい地域では、直ちに連携強化を図るべきである。
 なお、公共料金が滞納された場合に行政に知らせるなどの連携体制については、要保護者把握の面では有効であることから、各自治体においても早急に検討すべきである。

 さいたま市の事件より1か月前の1月20日にも、札幌市のアパートの一室で、40代の姉妹が孤独死するという事件が起きている。
 姉が体調不良により失業し、知的障害のある妹が受けていた、2か月で13万円余りの障害年金が唯一の収入であるという状況の中で、姉妹は生活に困窮していた。冷蔵庫に食べ物はなく、電気やガスも止められ、姉が病死した後、続いて妹が凍死した。姉は生前、3回も福祉事務所を訪れ、「生活していけない」と生活困窮を訴えたが、いずれも生活保護の申請には至らなかったという。

 仮に住民同士の関係が親密であり各自治体における連携強化がなされたとしても、これらの餓死・孤独死事件が完全に防げるわけではない。いかに生活困窮者を把握し、発見したとしても、最後のセーフティネットである生活保護制度が適切に運用されなければ、このような事件は防ぐことができない。

 当連合会は、これ以上このような悲劇を繰り返さないため、全国の福祉事務所に対し、生活困窮者の把握のため関係機関との連携を強化することに加え、生活保護の相談に訪れた者に適切な助言を行い、申請者の生きる権利を第一に考え、急迫の場合には職権保護の可能性を検討するよう生活保護の適切な運用を求めるものである。