不動産登記実務メモ
不動産登記業務に関する法令、実務(先例・質疑応答等)の備忘録としてのページを予定しています。
住宅用家屋の所有権の保存登記等の登録免許税の税率の軽減措置に係る市町村長の証明事務の実施について 2011.08.09
〔建設省住民発32号 改正平成23 年6 月27 日〕
平成23年8月8日日司連発668号
国土交通省住宅局長通知の送付について(お知らせ)
(2011.08.09 mail)
電子証明書に関する重要なお知らせについて 2011.08.08
平成23年8月8日日司連発第664号 (2011.08.09 mail)
・次期の司法書士電子証明書はセコム社の運営する「パスポートfor G-ID」サービスを利用して発行する。
ただし、会員の実在性、本人性、資格確認の審査業務等を実施する登録局の業務は連合会が行う。
・司法書士電子証明書をファイル形式で発行
・新方式での運営は、2011年11月に連合会より全司法書士会員(電子証明書未取得者を含む)の自宅住所に利用申込書を発送し、連合会において利用申込みを受け付けたのち、2012年1月10日より新方式の電子証明書(ファイル形式)を申込みに従い順次発行する。
・早期の申込み(2011年11月から2012年3月末日まで)をした会員に対しては、発行手数料を減額(\5,250-税込/5年間未満※)をすることとした(通常料金¥7,245-税込/5年間未満)。
・現方式の司法書士認証局については、2012年8月をもって閉局する。
閉局までの期間は、現方式と新方式を並行運用するため、両方式の電子証明書の利用が可能となる。
・新方式への移行については、月報司法書士8月号にも詳細を掲載予定
退職した取締役に対して退職慰労金を支給するに際して,会社所有の不動産の所有権を移転する場合における不動産登記の登記原因について(2012.07.02)
まずは結論から
本件について小職が管轄法務局と打ち合わせたところ、
『年月日会社法第361条第1項の報酬等の給付』
がよろしいのではないかということであった。
ちなみに、会社法第第361条第1項とは
(取締役の報酬等)
第361条
1.取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下この章において「報酬等」という。)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。
一 報酬等のうち額が確定しているものについては、その額
二 報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法
三 報酬等のうち金銭でないものについては、その具体的な内容
さて、この論点については、司法書士内藤卓氏(京都会)が下記ブログにアップしている。
(大変すばらしいものです)
■司法書士内藤卓のLEAGALBLOG
http://blog.goo.ne.jp/tks-naito/e/ec80cf8c7f61bd7582203038bc72a3ca
http://blog.goo.ne.jp/tks-naito/e/84268acf1841660918d2701f2b3cbc06
さらに、下記ブログもありました。参考にさせて頂きました。
■ルンルン司法書士のつれづれ日記
http://ameblo.jp/hitodayo/entry-10310113423.html
■坂本龍治の日記「流」
http://d.hatena.ne.jp/l224/20120411/1334093864
ほか
・ネット上には次のような原因が散見されました。
①年月日会社法第361条第1項第3号による報酬の付与
②年月日会社法第361条第1項による報酬の付与
③年月日会社法第361条第1項第3号の規定による移転
④年月日退職慰労金の給付
⑤年月日会社法第361条第1項第3号の報酬等としての給付
登記名義人の氏名の変更又は更正の登記の登記原因証明情報(2012.07.31)
●登記名義人の氏名の変更又は更正の登記の申請につき、住民票で変更又は更正の事項が明らかである場合には、その謄本又は抄本を添付すれば足り、更に戸籍の謄抄本の添付を要しない。
昭和40年9月24日民事甲2824回答
- 氏名の変更更正があったことを証する書面としては,戸籍謄抄本が原則です。例外として要件が備われば住民票でも可。
住居表示の実施に伴う会社等の法人の事務所の表示変更により、不動産の登記名義人表示変更登記を申請する場合の非課税証明書(2012.07.31)
●住居表示の実施に伴う会社等の法人の事務所の表示変更により、不動産の登記名義人表示変更登記を申請する場合、当該法人の登記簿(法人の登記管轄登記所と不動産の登記管轄登記所が同じである場合)、又は、法人の事務所の表示変更を証する書面として添附した登記簿の謄(抄)本の記載において住居表示の実施により事務所の表示変更があったことが明らかなときは、登録税法施行規則5条ノ8の規定による市町村長の証明書の添附を省略して差し支えない
昭和38年9月13日民事甲2608回答(通達)
- 原則は,市区町村長発行の住居表示実施の証明書等です。
現在事項全部証明書や履歴事項全部証明書にその記載がなくても,閉鎖登記簿謄本に記載されているケースがあったような気がしますが…。 新たに閉鎖謄本を取得するのであれば費用がかかりますね。
相続による所有権の移転の登記がされている農地について真正な登記名義の回復を登記原因として他の相続人に所有権を移転する登記の申請に関する農地法所定の許可書の提供の要否等について(通知)(2012.08.03)
〔平成24年7月25日付法務省民二第1906号〕
●仙台法務局民事行政部長 照会(平成24年7月9日総第112号)
相続による所有権の移転の登記がされている農地について,真正な登記名義の回復を 登記原因として,他の相続人に所有権の移転の登記を申請する場合の農地法(昭和 27年法律第229号)所定の許可書の提供の要否については,不動産登記法(平成16年法律第123号)においては,登記原因証明情報の内容として事実関係(相続登記が誤 っていること,申請人が相続により取得した真実の所有者であること等)又は法律行為 (遺産分割等)が記録されていれば,当該許可書を提供することを要しないものと考え ますが,いささか疑義がありますので,照会します。
あわせて,この場合における昭和52年8月22日付け第4239号民事局第三課長 依命通知「時効取得を原因とする農地の所有権移転登記等の申請があった場合の取扱い
について」による農業委員会宛ての通報については,とれを要しないものと考えますが,その要否につきましでも,照会します。
●法務省民事局第二課長 回答(平成24年7月25日付法務省民二第1906号)
本月9日付け総第112号をもって照会のありました標記の件については,前段及び後段共に貴見のとおりと考えます。
●同 通知
なお,昭和40年9月24日付け民事甲第2824号民事局長回答及び同年12月 9日付け民事甲第3435号民事局長通達のうち,別紙乙号の回答と抵触する部分は,変更されたものとして了知願います。
- 別紙乙号の回答とは,上記平成24年7月25日付法務省民二第1906号民事局第二課長回答のこと。
- 大きな先例変更と思います。
後見開始の審判申立と取下について(2012.12.11)
Q申立人が自分自身を成年後見人候補者として後見開始の審判の申立てをしたものの、自分以外の者が成年後見人として選任されそうである(審判前)又は選任された(審判後)ため、審判が確定する前に取り下げることは認められるか?
A現在の家事審判法、非訟事件手続法には何ら規定がない。
成年後見等の開始については申立主義を採用していることから、後見開始等の審判が確定する前であれば、申立ての取下げができるとされている。
東京高決 平成16.3.30 判例時報1861号43頁
(これとは別に、事案の内容や手続の進捗度合いに応じて申立ての取下げに手続終了の効果を認めない裁量権を有するとして、成年後の審判前の取下げを認めなかった例もある(東京高等裁判所 平成15年6月6日判例集未登載、東京家裁運用状況67頁)。
なお、平成23年に成立した家事事件手続法121条では成年後見開始事件の申立の取下げについて明文で規定されました。
同条1号により、成年後見開始の審判がされる前であっても、家庭裁判所の許可を得なければ、申立は取り下げることができないものとされました。
参考
東京家庭裁判所
後見Q&A
http://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/koken/koken_qa/index.html#1_q14
Q14 申立人が推薦した後見人等候補者以外の方が後見人等に選任されたり,成年後見監督人等が選任されることに不満があるため,申立てを取り下げたいのですが,可能ですか?
A14 現行法下では原則として可能ですが,平成25年1月1日から施行される家事事件手続法では,取下げについては家庭裁判所の許可が必要となります。後見人等の選任に関する不満を理由とした取下げは,本人の利益に配慮して許可されない場合に該当する可能性が高いと考えられます。
「法定後見実務の改善と制度改正のための提言」平成20年7月(制度改正研究会 日本成年後見法学会)
http://jaga.gr.jp/pdf/H19_seidokaisei.pdf
http://www.egidaisuke.com/legal_info/cat01/q9_02.php
「成年後見制度-法と理論の実務」有斐閣 初版42頁
http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/4641134367
今さらながら『己』『已』『巳』(2013.1.4)
『己(コ、キ)』『已(イ)』『巳(シ、み)』は似て非なる字です。
備忘のために記します。
結論:『己』『已』『巳』の3文字は別の文字である。
根拠(?):平成16年10月14日付法務省民一第2842号通達により新たに「誤字俗字・正字一覧表」が示されたことにより、平成6年11月16日民二第7007号通達により示された「誤字俗字・正字一覧表」が廃止されたため。
▲登記実務では、登記名義人の表示の更正の登記等の要否については平成6年11月30日付け法務省民三第8713号通達に従っている。
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平成6年11月30日付け法務省民三第8713号
登記名義人の表示の更正の登記等の要否について(依命通知)
本年11月16民日付け民二第7007号民事局長通達により、氏又は名の記載に用いる文字の取扱いに関する「誤字俗字・正字一覧表」が制定されたが、登記名義人等の氏名が同通達の「誤字俗字・正字一覧表」に掲げられた誤字又は俗字で記載されている場合の登記事務の取扱いについては、下記によることとされたので、この旨貴管下登記官に周知方取り計らい願います。
記
登記名義人の表示が、上記「誤字俗字・正字一覧表」に掲げられた誤字又は俗字で記載されている者につき、所有権移転登記等の申請があった場合において、その申請書又は添付書面の氏名が同表の正字等で記載されているときは、登記名義人の表示の更正又はその者が同一人であることの証明書の添付は要しない(昭和43年7月2日付け民事甲第2302号民事局長回答参照)。
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平成16年10月14日付法務省民一第2842号通達により新たに「誤字俗字・正字一覧表」が示されたことにより、平成6年11月16日民二第7007号通達により示された「誤字俗字・正字一覧表」が廃止された。《新》「誤字俗字・正字一覧表」と《旧》「誤字俗字・正字一覧表」とは、下記■が異なっている。
■《新》一覧表では、「一 常用漢字に関するもの」の表『己』の列中「已」の文字が削除された。
◎そのため「已」→「己」への申出による訂正はできなくなった。
■《新》一覧表の、「二 規則別表第二の一の漢字に関するもの」の表では、《旧》一覧表にあった『巳』の文字列「巳 已 己」が削除された。
◎そのため「已」「己」→「巳」へ申出による字体の訂正はできなくなった。
■《新》一覧表の、「三 常用漢字・規則別表第二の一の漢字以外の漢字に関するもの」の表では、《旧》一覧表にあった『已』の文字列列「已 己」が削除された。
◎「己」→「已」の字体へ申出による訂正はできなくなった。
参考
夜もすがら登記イズム
http://toukism.blog.fc2.com/blog-entry-6.html
http://toukism.blog.fc2.com/blog-entry-7.html
http://toukism.blog.fc2.com/blog-entry-3.html
http://toukism.blog.fc2.com/blog-entry-4.html
「市民と法」№42(2006.12)p.116
利益相反取引と取締役会議事録の印鑑証明書 2013.06.18
株式会社所有の不動産について登記を申請する場合に、登記原因が当該株式会社と取締役との利益相反行為に該当するときは、これを承認する取締役会議事録等を添付する必要があります(会§356/不登記令§7Ⅰ⑤ハ)。
この議事録には、出席した取締役及び監査役の署名又は記名押印が必要(会§369Ⅲ)で、登記先例により印鑑証明書を添付を要します。
■
□■特別利害関係を有する取締役も、取締役会に出席していたとして、取締役会議事録の記名押印した場合、当該取締役についても実印を押印し印鑑証明書の添付を要するのか?
たしかに、次のような考え方もあります(実は私も)。
特別利害関係を有する取締役も、取締役会に出席していたとして、取締役会議事録の記名押印に名を連ねることも多いが、審議及び議決に加わらなかった当該取締役が、法的な意味で取締役会に出席していたといえるのかという問題もある。取締役会の場に在席したとしても、「オブザーバー」に過ぎないと考えられるのである。
取締役会に出席した取締役に対して、議事録への署名等を義務付ける理由としては、議事録に異議をとどめない取締役について、その決議に賛成したものとの推定が働く(会社法第369条第5項)ことにあるが、これは、「取締役会の決議に参加した」取締役に及ぶ推定効であって、決議に参加しなかった特別利害関係を有する取締役には無縁である。
したがって、審議及び議決に加わらず、単に在席していたに過ぎない取締役の記名押印は、法的には意味のないものと言える。当該取締役の記名押印は、会社法第369条第3項の射程外であり、単なる余事記載とみることができ、極論すれば、当該取締役の印鑑証明書は、不要と解することができよう。
しかし、次のような不動産登記先例があります。
■自己取引についての取締役会議事録に署名した監査役の捺印及び印鑑証明書の要否について(昭和55年11月22日民三第6720号民事局長回答、同日民三第6721号民事局長通達〉
標記の件について、別紙甲号のとおり福島地方法務局長から照会があり、別紙乙号のとおり回答したので、この旨貴管下登記官に周知方取り計らわれたし
別紙甲号
不動産登記法第35条第1項第4号の書面として、資本の額が1億円を超える株式会社の取締役会議事録(出席監査役は署名のみで捺印していない)を提出する場合、昭和37年6月27日民事甲第1657号貴職回答後段に準じて「右は議事録に相違ない」旨を記載し、署名した監査役が署名捺印(又は記名捺印〉し、その者の印鑑証明書を添付させるのが相当と考えますが、いささか疑義がありますので何分の御指示を願います。
別紙乙号
本年7月14日付け第572号をもって照会のあった標記については、貴見のとおり取り扱うのを相当と考える。
独立行政法人北方領土問題対策協会の包括委任状(2013.10.09)
包括委任状でミスをしたので備忘として…
法令上、業務の一部を他に委託することができるとされている場合、受任者との関係が法令上の代理関係と同視し得るような場合には、包括的な代理権を授与したいわゆる包括委任状を代理権限を証する情報(不動産登記令第7条第2号)とすることが先例で認められています。この包括委任状には、包括的代理権が与えられた旨の表示がなされていれば足り、その性質上、具体的な登記事項及び不動産を表示する必要はありません。
つまり、先例で認められた包括委任状のみが登記申請の際の代理権限証明情報(の一部)となり得ます。
独立行政法人北方領土問題対策協会の金融機関に対する包括委任状を登記申請の委任状と認める登記先例はありません。
原則として、代理権限を証する情報=委任状には、登記の申請人(委任者)と代理人(受任者)の住所、氏名を記載するほか、いかなる登記の申請を委任したかを明確にするため、申請書に記載する登記事項及び不動産を表示しなければなりません。
登記原因証明情報を提供して申請する場合には、例えば「平成○年○月○日付け登記原因証明情報記載のとおりの抵当権設定の登記」の申請を委任する旨の記載があれば足り、申請すべき登記事項及び申請の目的である不動産の表示がされていなくても差し支えありません(昭和39年8月24日民甲2864参照)。
抵当権の債務者表示変更登記の省略の可否 (2013.11.29)
抵当権の債務者表示変更登記の省略の可否(登研452号)
【要旨】 抵当権の債務者変更登記を申請するに当たり、登記簿上の債務者の住所氏名に変更が生じている場合は、その表示変更登記を省略する扱いは認められない。根抵当権の債務者の変更登記を申請する場合も同様である。
[問] 債務引受等による抵当権の債務者変更登記を申請するに当たり、変更前の債務者の住所氏名に変更を生じている場合は、その表示変更登記を省略する扱いは認められないと考えますが、いかがでしょうか。便宜、省略できるのではないかとの意見もありますので、お伺いします。
また、根抵当権の債務者の変更登記を申請する場合も同様に考えて差し支えないでしょうか。
[答] 御意見のとおりと考えます。
成年後見人が成年被後見人の居住用不動産の処分についての家庭裁判所の許可を得て売却した場合にする当該不動産の所有権の移転の登記の申請における登記識別情報の提供の要否について(2013.12.4)
(民法第859条の3/登記研究779 平25・1_カウンター相談)
【 問 】 成年後見人が家庭裁判所の許可を得て成年被後見人の居住の用に供する建物又はその敷地の売却を成年被後見人に代わって行った場合において,当該建物又はその敷地の所有権の移転の登記を申請するときは,登記識別情報を提供することを要せず,事前通知等も要しないと考えますが,いかがでしょうか。
【 答 】 御意見のとおりと考えます。
【説明】 登記研究779 平25・1_カウンター相談 p.119~
【参考】月報 司法書士 2013.9 №499 p.27~『成年後見制度と不動産登記』
退職慰労金として給付された不動産についての所有権の移転の登記の申請をする場合における登記原因について(2013.12.30)
【7957】退職慰労金として給付された不動産についての所有権の移転の登記の申請をする場合における登記原因について(登記研究790号 平成25年12月号)
〔要旨〕退任する取締役に対し,退職慰労金として, 会社所有の不動産を与える旨の株主総会の決議がされた場合において,当該不動産の所有権の移転の登記の申請をするときの登記原因及びその日付は「年月日退職慰労金の給付」とするのが相当である。
[問]
A株式会社の株主総会において,退任する取締役Bに対し,退職慰労金として, A株式会社が所有する甲不動産を与える旨の会社法(平成17年法律第86号)第361条第1項の規定による決議がされ, Bがこれを席上で受諾した場合において, 当該給付に基づく甲不動産の所有権の移転の登記の申請をするときの登記原因及びその日付は「年月日退職慰労金の給付」とするのが相当であると考えますが、いかがでしょうか。
[答]
御意見のとおりと考えます。
[参考]『退職した取締役に対して退職慰労金を支給するに際して,会社所有の不動産の所有権を移転する場合における不動産登記の登記原因について(2012.07.02)』
混同によって消滅した抵当権の抹消登記を抵当権者の共同相続人中1名のみで申請することの可否(2014.05.06)
【登記研究252号】
■抵当権者が抵当不動産の所有権取得登記後死亡したときは、混同による抵当権の抹消登記を共同相続人中の1名から申請できる。
【不動産登記実務の視点Ⅰ(p.53)】
■混同によって抵当権が消滅した後抵当権者が死亡した場合,当該抵当権の抹消登記の申請は,既に実体法上の効力を失って登記記録上にその痕跡のみが残っているに過ぎない登記を抹消するものであって,民法252条ただし書に規定する保存行為に該当するから,実体上の共有者である共同相続人のうちの一人からでも申請することができるのである。
【札幌法務局 平成4年11月5日4・5組職員事務打合せ会第4問】
[問]次の事例の場合,混同による仮登記の抹消登記申請の登記義務者は,登記の申請の真正の保持,他の相続人の権利の侵害のおそれがないので, X 1名であっても,受理できると考えますが,いかがでしょうか。
甲区2番 所有権移転請求権仮登記(売買予約) A
甲区3番 所有権移転(売買) A
甲区4番 所有権移転(相続) X
[首席登記官意見]
保存行為(混同で既に消滅している。)と考え, X 1名が申請人として行っていたが,共同申請ですべきであり,相続人全員による申請とすべきと考える。
(平成4年11月5日4・5組職員事務打合せ会第4問)
[コメント]
本間における甲区順位2番の仮登記請求権は, Aの死亡以前に混同により消滅している(民法520条本文)。登記の形式上,当該仮登記の抹消登記申請の登記権利者は,甲区4番で相続登記を受けたXであり,登記義務者は, Aの相続人全員である。しかし,権利者Xは,同時に義務者の一人でもあることから,双方の立場を兼ねたXの単独による登記申請の可否が関われたものである。
登記権利者が数人あるときに,その登記が保存行為に該当する場合は,そのうちの一人から単独で全員のために登記申請をすることができる(民法252条ただし書)。これに対し,登記義務者が数人ある場合に,単独で共有の目的たる権利の抹消登記に応ずることは,当然に保存行為には該当しない(昭和37年2月22日民事甲第321号民事局長回答参照)。したがって共有者全員が登記義務者として登記申請をすることになる(藤原・不動産登記の実務上の諸問題317頁)。
《釧路地方法務局》
相続人全員からの申請でお願いしたい。
(平成26年4月18日受付第4852号)